変化する時代の中で社員第一の企業文化を築く───株式会社ジャストの挑戦
株式会社ジャストは、変化の激しい経営環境の中で、社員を大切にする企業文化をどのように構築しているのでしょうか?働き方改革や人材育成、そしてITを活用した知識、知見の共有の取り組みについて、角田 賢明社長にお話を伺いました。

株式会社ジャストは、1972年に設立された建築・土木分野の調査・診断を専門とする企業です。
神奈川県横浜市青葉区に本社を構え、約500名の従業員を抱えています。
「あらゆる構造物の安心・安全に利用できる世界をつくる」ことを企業使命とし、50年以上にわたり数十万棟の構造物の検査や診断を行ってきた会社です。
「困ったらジャストへ!」をモットーに掲げ、非破壊検査、建築・土木、テクノロジー技術を駆使してお客様のあらゆる課題解決に取り組んでいます。
大切にする価値観として、真のスペシャリスト集団であること、第三者性を保つこと、社員が主役であること、そして新たな挑戦を続けることが挙げられます。これらは時代が変わっても変わらない同社の根幹となる理念です。
業界のリーディングカンパニーとして常に技術とサービスの向上に努め、「唯一無二の価値」を提供することで、社会・顧客・社員の幸せを創造し続けることを目指しています。
主な事業は、住宅から大規模土木構造物に至るまで幅広く展開されており、非破壊検査、耐震診断、劣化調査を実施しています。独立した調査専門会社として、中立かつ公正な立場から信頼性の高い調査結果を提供している点が特徴です。
技術開発にも力を注いでおり、構造性能評価や超音波センサーなど、建築物の性能評価に関する先進的な技術やシステムを開発しています。
とくに、非破壊検査技術は同社の事業の中心であり、住宅、ビル、商業施設、公共施設、工場、ダム、トンネル、橋梁といったあらゆる建築・土木構造物の検査・調査・診断を行っています。
さらに、耐震診断結果に基づく改修設計にも取り組んでおり、建物の安全性向上に貢献しています。
こうした総合的なサービスを通じて、株式会社ジャストは建設業界において構造物の安全性と性能の確保に大きく寄与し、トップシェアを獲得する分野も多く、建築・土木分野の発展に貢献しています。
「人」がもっとも重要な資産
近年、企業にとって「働き方改革」は避けて通れないテーマとなっています。

株式会社ジャスト代表取締役社長 (2022年6月〜)
角田社長はお話の冒頭で「労務管理、働き方改革は重要な課題です」と語り、労務管理が会社にとってもっとも重要な要素であると強調されました。
経営判断の中でも、労務管理が最優先課題であることを意識し、自ら取り組んでおられます。
───人材育成や社会情勢の変化が進む中で、社会を支える企業としての労務に対するお考えや、日頃のちよだ桜並木社会保険労務士法人の活動についてご意見をお聞かせください。
角田社長:私たちは「人」が一番重要な資産の会社です。
人が動いて現場に行って、技術を通じてデータを取得し、分析結果をまとめて提出する、というのが基本的なオペレーションです。
そのため、労務管理、つまり「人の管理」が極めて重要な仕事になります。
たとえば、最近ホットなトピックには「働き方改革」があります。
残業の上限規制だったり最低賃金の上昇など時代がどんどん変わっていく中で、育児、介護など、会社が人を軸にしているがゆえに、色々な論点が日々変化します。
こうした状況の中で、労務のスペシャリストである社労士の方に相談できるのはとても心強いと感じます。 とくに、法律や制度、補助金や助成金の変更や更新は把握が難しい情報ですが、これらの重要な変更点を教えてくれたり、相談できることは大きな安心材料です。 何よりも、荒川先生は相談しやすく、すぐに対応してくださるので、とてもありがたく感じています。
職場環境をどうよくしていくのか、というのは永遠のテーマ
角田社長:私たちも事業としても、会社としても変化していく中で、やはり色々な労務課題は出てくるので、労務環境は基礎として整えていく必要があると考えています。
最近、事業承継である会社の株式を取得して、グループ化したんですね。
当社と規模の違いもあって、やはり労務関係にも非常に課題が多く、私たち主導で是正していく必要がある部分がたくさんあります。
こうした中で、ちよだ桜並木社会保険労務士法人は私たちジャストのこともちゃんと知っていて、かつ新しい会社のことを相談できるのは良いですね。
今後は労務環境はますます重要な経営課題になると捉えています。
───働き方改革や労務環境が厳しくなる中で、どのように社会に適応していくのか、何かビジョンや見解を教えていただけますか?
角田社長:職場環境を向上させることは永遠のテーマであり、終わりがありません。社員の休暇や教育機会の充実、職場環境の改善に、今後も積極的に取り組んでいく考えです。長期的な視点で社員の働きやすさを追求することは、社員のモチベーションを高めるだけでなく、組織としての強みにもつながると考えています。
* * *
労務管理を単なる「タスク」として処理し、部署に一任する経営者が多い中、労務管理は社長の重要な仕事であると認識しています。社長自身が現場の課題に対して高い解像度を持ち、社員と一体となってその解決に取り組む姿勢には、強い意志が感じられます。
株式会社ジャストの成長戦略の中心には、人材の採用と育成が据えられています。 近年、同社は人材採用のプロセスを一層厳格にし、応募者数を増加させる一方で、質の高い人材を厳選する体制を整えています。
「ご縁があって入社して頂いた人材をしっかりと育て上げることが、企業の未来を左右する」という信念のもと、徹底した教育と育成が行われています。
今後の展望と成長戦略
最後に、今後の展望についてもお聞きしました。
同社は、2030年までに売上100億円を目指す長期目標を掲げています。
───人材育成は多くの経営者にとって課題であり、とくにプロフェッショナルな人材の採用が難しいことが多いと聞いています。苦慮されている産業の方も少なくありません。株式会社ジャストとしての今後の展望についてお聞かせください。
角田社長:マクロな視点では人口減少が進む時代にあって、実際に会社としてどう動いていくのか、という戦略のひとつとして、私たちは「人事」に力を入れています。
これまで設置していなかった独立した人事部を作り、採用も専属の社員を複数増員して採用の強化にあたっています。
転職や仕事を探している人への「営業」活動としてリクルーティングを頑張ってやろう、ということを伝えました。 この取り組みの結果、少し前から10倍近くの応募者数の増加となり、多数の採用を獲得することができました。
応募者数の総数を増やした上で、しっかりとした選考プロセスを経て、一緒に長く働ける仲間を増やそうという方針です。
非破壊検査をはじめ、検査とか調査を行う人には一定の適性が必要です。 そのため、選考をやや厳しくする必要があるのです。適性検査を活用しながら、採用基準を厳格なものとし、採用した後はしっかりと「育て上げる」ことを大切にしています。
───未経験者の採用もあるのでしょうか。
角田社長:はい、行っています。部門によって異なりますが、当社は10以上の職種にわたる求人を出しています。たとえば、鉄骨の非破壊検査では資格が必要ですが、資格を持っていなくても素養がある方を採用しています。
また、体力を要する部署では、経験を問わず、体力に自信がある方を採用しています。採用活動は細分化されており、転職エージェントや派遣会社、紹介会社など、さまざまなチャンネルを活用しています。
───採用前から非常に多くのコストをかけていらっしゃるのですね。
角田社長:そうです。
それはやはり「人が資本の会社」であるという認識が根底にあるからです。
採用前からしっかりとコストをかけるべきだと考えています。
現在、私たちは「ビジョン2030」として、売上を100億円まで伸ばすことを目指しています。
そのためには、社員数をさらに数百人単位で増やし、採用後も教育や成長の機会を提供することが重要であり、そのための環境整備も欠かせません。
───経営者にとって人的リソースは大きな問題だと思います。生成AIなど人工知能の導入についても話題になっていますが、このような時代の変化をどう受け止めておられますか。
角田社長:一部の業務がAIに置き換わる可能性はありますが、ほとんどの業務では置き換えは難しいと感じています。
私たちの業務には「経験工学」のように、社員の経験則による判断が数多く含まれており、AIに任せられる部分は限定的です。
当社でもAIの活用を一部取り入れていますが、精度が求められるレベルに達するには、あと5〜10年はかかると考えています。
たとえば、マイクロソフト社のエクセルを扱うような内勤業務はAIで置き換え可能かもしれませんが、現場の複雑な業務は人間の体と感覚が必要不可欠であり、今後も置き換えは難しいと考えています。
IT活用によるナレッジシェアの促進
───こうした現場経験による部分をどのように蓄積し、周知していくのか、非常に難しいように感じます。多くのご苦労がおありになるのではないでしょうか。
角田社長:どうやってナレッジを貯めて、シェアしていくかというのは5年10年スパンでものすごく効いてきます。
そのためには、人材確保と育成が鍵となります。
とくに、人口減少という社会的トレンドに対応するため、人材の確保とその適切な育成は、今後ますます重要になると考えています。
こうした中、私たちは社内でSlack(スラック)を活用して、技術情報を共有しています。
現場で難しい課題に直面した際、社員がアイデアを出し合い、その情報を蓄積しているのです。
たとえば、現場で発生した事象について意見を求めるなど、自分の案件だけでなく他人のやり取りを見て学ぶことができるので、社内全体のスキルアップにもつながっています。
また、発言がオープンな場で行われるため、責任の所在も明確になります。
───そのオープンなやり取りが現場に反映されることで、ガバナンスが強化されていくわけですね。少し問題になる言動が生まれてしまうこともありそうですが
角田社長:ルールをしっかりと設けています。
たとえば、DM(個別の社員間チャット)は原則禁止し、すべてオープンな場でのやり取りを行うこととしています。そうすればマウントを取ることが難しくなります。
スラックでは過去のやり取りはすべて検索できるので、類似した現場を調べて知見を獲得できます。このような情報共有が、社員のスキルアップと会社全体の知識蓄積につながっているのではないかと思います。
これによって、IT活用によるナレッジシェアの促進の取り組みにより、社員は自分の担当していない案件でも、他部署のやり取りを通じて学ぶ機会を獲得できるのです。
───本日はジャストさんが大切にしていることに加えて今後の展望、また、IT技術の活用という具体的内容について大変貴重なお話をありがとうございました。
* * *
IT活用によるナレッジシェアの促進の取り組み、社員第一の経営等、とても素晴らしい取り組みを伺うことができました。
私たちも今日から真似できるノウハウを、しっかりとルール化してすべての部署に落とし込んでいく手腕はお見事です。
ITと投資銀行を経て社長に就任した角田社長。 ITや金融業界の知識が、業務の効率化やイノベーションの推進に寄与している点も興味深いポイントです。
社員第一を考え、社員のための会社であるというバックグラウンドが、社員同士の協力をする雰囲気を作り上げ、株式会社ジャストの競争力の源泉となっています。
「人材をどのように確保し、育て上げていくかが、企業の成長を左右する」との言葉から、同社の強い意気込みが感じられました。
ご協力いただきまして、ありがとうございました。
まとめ
株式会社ジャストは、労務管理や人材育成、そしてITの活用を通じて、社員を大切にしながら成長する企業文化を築いています。
時代が変化する中で、どのようにして社員が働きやすい環境を整え、企業としての成長を実現しているのか、その一端が垣間見えるインタビューとなりました。
ちよだ桜並木社会保険労務士法人は、産業分野のみならず、商業分野を含むあらゆる業界の労務管理において、豊富な経験と専門知識を活かしたサポートを提供しています。
当法人の強みは、業界の垣根を越えた包括的なアプローチにあります。
貴社の業界や規模にかかわらず、最適な労務管理のあり方について、専門家が丁寧にご相談に応じます。まずはお気軽にご連絡ください。